
第7回 「侵害受容主義から脳中心主義的痛み理解へのパラダイム・シフト:腕傍核-扁桃体中心核路の可塑性と痛み制御における能動的役割」 加藤総夫 先生 (東京慈恵会医科大学 痛み脳科学センター名誉教授)
日時:2025年12月23日(火)17:00~18:30
場所:三田キャンパス 471教室
痛みとは何か? 国際疼痛学会は,「実際の組織損傷もしくは組織損傷が起こりうる状態に付随する、あるいはそれに似た、感覚かつ情動の不快な体験」と定義している.組織損傷に関係しているが,組織損傷があってもよいし,なくてもよい.似ているだけでもいい.とにかくそれに似た感覚かつ情動でもあり,しかも必ず不快な「体験」である,と述べている.悩みながら定義しているのがよくわかる.しかし,この定義は証明・再現可能な根拠に支えられており,誰でも経験上知っていて,タコでもイカでもショウジョウバエでも証明されているという単純さと,多くの慢性痛患者を苦しめ続け,客観的な評価方法や単純な治療方策が存在しないというという複雑さ,という痛みの本質をそのまま反映している.「侵害受容性疼痛」「神経障害性疼痛」に加え,2017年に国際疼痛学会が提唱した第3の痛みのメカニズム「痛覚変調性疼痛 nociplastic pain」は,侵害受容も組織・神経の障害がなくても脳の可塑性によって痛みは起こる,という宣言であり,痛みが,侵害受容の結果として起こるのではなく,脳がさまざまな情報を基に生み出している,という新しい視点をもたらした.我々がげっ歯類で進めてきた腕傍核-扁桃体中心核間のシナプス可塑性と,その可塑性が痛み行動を生み出す実験成果を紹介し,痛みの制御と成立におけるその意義をお話ししたい.

第6回 「Prepairedness in thought and action」 David A. Rosenbaum先生 (University of California, Riverside 教授)
日時:2025年4月16日(水)14:00~17:30
場所:三田キャンパス 東館6F G-Lab
本講演はシンポジウム“Motor Control in Psychology”のKeynote lectureでした。心理学分野で運動制御研究を長年牽引してきたDavid A. Rosenbaum先生に,日常生活における様々な行為・運動に関する意思決定におけるバイアスやその原理について紹介していただきました。シンポジウムでは他に早稲田大学の山田千晴先生「Unveiling “cultural differences” in motor learning: the hidden cognitive bias in explicit strategies」,四條畷学園大学の花田恵介先生「Deficits in grasping and releasing objects after stroke」,東京都立大学の樋口貴広先生「Preparedness in avoiding obstacles」の講演がありました。




